
ギリシア哲学の始まりは、今から約2600年前に遡ります。
小アジア(現トルコ)の西海岸、イオニア地方の植民都市ミレトス。
紀元前6世紀、世界の始まりについて合理的に考える学者たちが、ここに出現。
そして、
ここに哲学が発祥したとするのが通説となっています。
当時のミレトスはギリシア本土ではなく、あくまでギリシアの植民地でした。このことは、哲学の始まり、哲学の誕生の秘密を知るうえで、とても重要です。
つまり、ミレトスは、現在のトルコがそうであるように、西洋とアジアの文化の境界線上の町。
たんにギリシアでもないし、またアジアともヨーロッパとも区別のつかない文化の宙吊り地帯でした。アジアがヨーロッパと交差する地点、ミレトス。
そのような場所で、哲学の「内にして外の眼」が初めて開いたことは、自然なこと、だと思いませんか?
※古代ギリシアやフェニキア(当時の地中海東岸)に見られる「植民地」は現代の概念とは異なっており、多くは植民元との関係は維持しつつ独立した体制となっていました。
侵略によって獲得した海外領土の類型は古代ローマに見られます。(参照:Wikipedia)

(ミレトスの劇場跡)
その始まりから約1000年。
長大なギリシア哲学(ギリシャ哲学)の歴史は、大きく四時期に分類されます。
第一期(前585年~前450年)は、ミレトス生まれで哲学の創始者タレスから、ソクラテスの登場までを指す「前ソクラテス期」(または初期ギリシア哲学)です。ギリシア本土(アッティカ、アッチカ)ではなく、イオニア地方や南イタリアの植民地で
、自然宇宙への思索が花開きました。【活躍した哲学者:タレス、ピタゴラス、ヘラクレイトス、パルメニデスなど】

(哲学の創始者、タレス)
第二期(前450年~前322年)は、ギリシア本土が哲学の中心となることから「アッティカ哲学期」と呼ばれます。アッティカ(アッチカ)とは現在のギリシャのアテネ周辺を指す地域名です。
ソクラテス、プラトン、アリストテレスがアテナイで活動した百数十年間であり、彼らの名前が広く知られているように、最も重要な時期であるとも言えるでしょう。
自然ばかりでなく、人間や国家や精神、論理など、哲学の主要問題のすべてが探求されました。しかし、アリストテレスの死をもって、ギリシア哲学の最も創造性豊かなこの時代が終わりを告げました。
【活躍した哲学者:ソクラテス、プラトン、アリストテレス】

(ソクラテス)
紀元前338年、カイロネイアの戦いによってマケドニア王国がアテナイ・テーバイ(古代ギリシアのポリス)連合軍を破ってギリシアの覇権を握ったことで、ポリスは崩壊しました。
それ以後、マケドニア王国とその継承国家がギリシアを制圧、第三期(前322年~後30年)「ヘレニズム期の哲学」が始まります。「ヘレニズム」とは、「ギリシア人」に由来する語で、その用法は様々です。
この場合、時代区分として使われており、アレクサンドロス大王(336年~前323年のマケドニア王)の治世からプトレマイオス朝エジプトが滅亡するまでの約300年間を指していると考えるとよいでしょう。
ヘレニズム期の始まりに伴い、哲学の舞台はアテナイからシリアやマケドニアといった周辺地域へと移っていきます。
ポリス崩壊後の巨大な世界国家の中で、「いかに生きるべきか」という苦悩や不安が芽生え、エピクロス学派やストア学派などが生まれ、倫理学なるものが明確に登場しました。この時代の教説内容は様々ですが、乱世を生きる個人の実存的不安を解決しようとする点で共通しています。
ですから、
この時代においての共通の観念は「アタラクシアー(心の平静・不動の状態)」だと言えるでしょう。エピクロスはアタラクシアーの実現が哲学の目標であると説いています。
【活躍した哲学者:エピクロスなど】

(エピクロス)
その後マケドニアは、地中海世界に勢力を拡大するローマの圧力に直面することとなりますが、ローマ帝国によって庇護され、なんとか命脈を保ちます。
それが、第四期の「グレコ=ローマン期の哲学」(後30年~529年)です。ピロンや新プラトン主義などの、超自然的なものに迫ろうとする「神秘思想」の傾向を生み出しました。【活躍した哲学者:セネカ、M・アウレリウス、プロティノス】

(セネカ)
しかし529年、
東ローマ皇帝ユスティニアヌスによる異教(非キリスト教)禁止令によって、アテネのアカデメイアは閉鎖され、学者たちは追放されました。こうしてギリシア哲学はその長大な歴史に幕を下ろすこととなったのです。

(ユスティニアヌス)
◎この記事は『現代思想としてのギリシア哲学』を参考にしました。
あらゆる角度からの非常にわかりやすい解説でギリシア哲学について教えてくれています。
大変おすすめです。
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